禁厳有共

晒さないでください

私の職業は肥大した承認欲求が行き着く代表みたいなものと思われがちだけれど、実際は想定よりかなり承認欲求は満たされないと思う。

でもそれは、目指し始めた状態の私が心に穴を抱えていて、叶ったタイミングで環境が大きく変わった事により急に満たされるようになり、心の隙間のようなものが埋まったからだという気もする。

でもそれまでにはなんだかんだ2年もかかっていて、その間ずっと心に穴を抱えていた訳でもなければキラキラとずっと憧れ続けたというわけでもない。
ぼーっと過ごす中で思い出したように自分のプロフィールを送りつけただけで、2年間、そんなつもりはさらさらなかった。

自己実現が叶った時点でそのような欲求がある程度なくなるのか、満たされている充実した生活をしているから萎れたのか、承認欲求など感じる事ができないほど泥臭い思いをしているからなのか。

欲望に関するピラミッドにはあまり詳しくないけれど、私のようなメンヘラヒス女から承認欲求が取り除かれて随分と穏やかになれた事は嬉しくて仕方がない。

所謂“リア垢”ではないSNSも、全然好きじゃない。
できるだけ開きたくないし、何が楽しいのかわからない。
それは私の生活が充実している証拠だと嬉しくなる。

でも、辞めたと思えば出戻りする人が多いのを見ると承認欲求が満たされているという現状に気付けず、失って初めて欲求が満たされる場所だと気付くからなのかな。

だから私は盛大に見送って貰っておきながら出戻る人間がダサくて好きじゃない。
スポットライト症候群です、欲求に負けました、といっているようだなと思ってしまう。

私は一生分の承認欲求を満たしたらその後はインターネットから離れた場所で、本を読んで映画を観て犬と遊んで昼寝をしてお菓子を作って旅行やおでかけをして、そういう日々を過ごしたい。
のんびりとした、以前の私なら退屈だと見向きもしなかったであろうつまらない日々を夢見ている。

もしかしたら、満たされたとか今が忙しいとか関係なく、単純に歳を取っただけなのかもしれない。
こうやって老いていくだけならやっぱり私はインターネットに新鮮で若い自分を 自分が輝いた証拠を残したい、いま確かにそう思った。

そこに“私”が在るだけで承認欲求が満たされる有難い場所だ。

画面を通じてインターネットに姿を現すエンジェル達には加工アプリが必要だが、三次元で輝く私にそんなものは必要なく、自分で彩ったその人生を確かに其処に残そうと思う。