禁厳有共

晒さないでください

一目惚れをした感想

生きてて一度だけ異性に一目惚れした事がある。


私は女の子に対する好みや性癖がかなり確立されていて、 黒髪ロングヘアー、ぱっつん姫カット、丸顔で大きな目、ゴシック又はロリータチックな服装の女の子が好きだ。明確に説明できる。


ストレートだけれど、そもそも男性にあまり興味がなかったので好みは自分でもよくわかっていなかった。
山田涼介や吉沢亮は誰が見てもカッコいいし、綺麗で、当然美しいなとは思うけれど自分の好みに刺さるという感覚をそれまで感じた事がなかった。
好みなんてものがないから、黒髪、短髪で清潔感があればなんでもいいし、痩せてて不健康な人間より健康そうな人間の方が良いと思っていた。
人気なイケメン俳優は顔が短くてショタっぽい人が多いからか、そういう顔が好きだと思っていた。


2021年の夏の終わり、いつだろう。
「夏の終わりは甘いキャンディーだった」
そんな文章と一緒に投稿された写真。
綺麗な青髪、ウルフカット、儚い表情をした不健康そうな姿の男の人。


人生で感じた事のないような電撃が走った。
刺さった。パラダイムシフトだった。
全てがそこで決まってしまった。
画面越しでなく、現実で起こっていたらどうなっていたのだろう。


すぐにプロフィール欄に飛んでフォローボタンを押した。投稿を全てスクロールして遡る。
投稿一つ一つに写るその姿の全てが好きだった。
青色の綺麗なウルフカット、切れ長な奥二重、白くて綺麗な歯、シュッとした輪郭、高い鼻、Eライン、ゴシックでパンクなファッション、手、鎖骨、華奢な手脚。
全てが私の性癖になった。その瞬間自分はこういう人が好きなんだと自覚させられた。


そうは言ったものの、そこから一年しないくらいの期間は画面越しで眺めていただけだった。
現実に存在している気がしなかったし、存在していなくても構わなかった。
ただSNSが更新されるとうれしい、頭の片隅にもないそれだけの存在。


中間テスト終わり、偶然フリーライブに間に合うから。ただそれだけの軽い理由。
VeatsShibuyaで赤色のペンライトを点灯していた。
画面とは別の人間が出てきても構わないと思っていた。地下アイドルって結構そういうものだし。


SEと一緒に登場した彼は画面に映るそのまま、それ以上、遥かにかっこよかった。
彼によって確立されたのだから当然ではあるが、私の性癖そのものだった。
歌は酷いなと思ったし、ダンスだって私の方が何倍も上手く踊れるな…とライブに対しては別の意味で驚いた。
それでも久しぶりのライブハウスはとても楽しかった。


終演後、チェキを買って会いに行った。
初めて異性の地下アイドルとチェキを撮った感想は「お金を払えば一目惚れした人と話せるのってめっちゃいいな」だった。


私の初めての恋人は一目惚れした同級生に恋焦がれつつ何の行動も起こせず、みたいな感じだったので、こちら側がお金を払えば相手が話してくれたり、至近距離で顔をまじまじと見ても何も咎められないのは有難い…。と素直に思った。
アイドルとオタクはそれ以上の関係になる事はないけれど、例え同じクラスだったとしても全く相手にされなかったら意味がないので。
どうせならそんな状況でいるよりもお金を払えば話せる方が都合がいいと思っていた。


何故か人伝てにその初めての恋人が例の一目惚れした相手と頑張って会って普通にフラれた事を聞いた。
その時はざまあみろと思ったしとってもとっても嬉しかったけれど、今の私はそれが心の底から羨ましい。


ただ見た目が、パッケージが好きなだけで、どうせ中身は合わないのに無駄に恋焦がれているこの時間。
違反行為で出禁にならなければいつでも会いに行ける相手。
叶わない恋に消費されていく私の憧憬と10代の恋心。


お金を払っているからくれる「かわいい」「会いにきてくれてありがとう」「だいすき」に対して割り切れなくなった時、私は初めて相手から拒絶されればいいのにと願った。





追記

https://www.instagram.com/p/CTE5RTAJr2C/?igshid=MDJmNzVkMjY=